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雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ち付けても、倒れることはない。岩を土台としているからである。

愛されている光子

愛されている光子 11 自由になった

「ハロー?」「ハロー、光子?}「ああ、恵(ケイ)、どうしたの?」
「ええ。どうしたのと聞きたいのは私なのよ。」「どうして?」
「だって、あんたこの頃どうかしてない。ぼんやりしてるし。何があったの。」
「・・・。」「どうしてだまってるの。」
「うん。恵、あなた子供たちとゲームしたりして遊ぶ。」
「何よ、突然。私はね、子供たちとよく遊ぶよ。ワード・サーチは難しいけど、日本の双六みたいなゲームは簡単だし、楽しいじゃない。そしてうちではリックがギター弾いてくれるから、ゲームの中で罰に芸をしなさいなんていうのがみんな大好きなのよ。」
「そう。楽しそうだね。」
「楽しそうだねって。あんたは子供たちとゲームしないの。」
「恵、私はね、何だか楽しんだりしてはいけないみたいに感じるのよ。話したでしょう。神がしなさいってことをしないで逃げ出しちゃったこと。それって、神の言うことに逆らったというか、しなかったのだから罪なのよ。」
「それだからどうしたの。罪を犯さない人なんていないし、罪を犯したのだから楽しいことをしてはいけないの。」「だって、...。」
「あんた、イエスのこと間違って考えてるんじゃない。私だって大きな罪を犯していたよ。イエスに会い、聖書を勉強すればするほどその罪が心にのしかかってきたけど、ある日とうとう分かったのよ。こんな罪人でも、イエスは愛して許してくれるってね。」
「あなた、どんな罪をおかしたの。」
「光子。今日は私が心配してあんたに電話したんだから、あんたのことなのよ。私のことはいつか話してあげるよ。」「ほんとうよ。」
「ところで、罪を犯したんだから楽しいことしちゃいけないって、あんた本当にそう思えるの。」「そうね。そう思えるというか、そういう考えになっちゃうというか。」
「あんた悪霊というか。サタンを信じる。」
「信じるし、霊の世界のことはいつも考えてるよ。」
「そう、自分のことって分かんないだね。あんたね。あんたが、罪にあるものは楽しんじゃいけないなんて考えるのは、サタンのささやき掛けだよ。」「うん。そうだね。」
「あんた、サタンと戦わなくちゃ。それに子供たちが可哀そうじゃないか。」
「そうだね。ありがとうね。電話してくれて。」
「一人で考えないで話しなね。」「うん。じゃ、またあなたの話も聞かせてね。」
恵からの電話を切ってから、光子は考えてみたが、どうしても罪を犯していると思う思いが重くのしかかってきて、がんじがらめになった。

恵は光子を見ていてくれて、電話をしてくれたり、あれこれと心を配ってくれてる。有
難いことだった。でも恵が言うように、罪について口にだして謝っても、光子には許された、自由になった、心が晴れ晴れしたというような思いにはなれなかった。時間が経つと元の木阿弥で、苦しんで、落ち込んでしまうのだった。

光子の教会には牧師がおらず、こんな苦しみを話して相談するには、どうすればよいのか。それに神の声が聞こえたなどと牧師でも言わないほうがいいように思えた。
そんな苦しみの中にいた光子に朗報が伝わってきた。フール・タイムの牧師が雇われるらしいとのニュースだった。恵は、今度来る牧師は、若く、経験も浅いらしい上に、説教よりも教えることのほうが良いと言っているが、それでは牧師が務まらないのではないかと心配していた。光子は、それとは反対に、心に期待があった。何か光子の心霊に触れるものがあった。それが何のか分からないが、その牧師が言ったことの一つに、自分は神の声にならない声に導かれて、この教会で働くことにしたと言ったことだ。この牧師は、もしかしたら神の音になった言葉を聞いているかもしれないと光子は思った。

しばらく経ったある日、牧師は光子に、今度の土曜日に悪霊追い出し(デリバランス)の祈りをするので手伝ってくれと言った。光子は「はい」と答えたものの、デリバランスなんて映画などで見るあの恐ろしいエクソシズムのことじゃないのか。心配性の光子は、悪霊に取り付かれたり、暴れ出されたりしないのだろうかと心配した。

光子は、土曜日に会う人の名前も知らなかったが、何かと心にかかり、時間をかけて祈っていた。光子は祈っているとき、目の前に何か黒い人の形をしたようなものがすーっと過ぎ去って行ったのを見たり、頭の上から冷水を浴びたような感じがしたりした。
土曜日が近づくにしたがって、心が重く、深い深い沼の底に引き込まれるような感じになり、もがけばもがく程、もっと深く引き込まれるような感じで恐ろしくなった。これは悪霊の仕業なのだろうか。こんな状態では土曜日に会ってデリバランスの手伝いをすると言っても何ができるのだろうか。はじめてなのでその恐れもあるのだろう。何はともあれ、「全てのことを益としてくださる」との神の約束を頼みとしようと考えた。
とうとうその土曜日がきた。光子は早めに教会へ行き、お茶を沸かしたりして、今日会う人たちが来るのを待った。牧師はお茶や水を出すときはペーパーカップを使うようになどと言った。何故なのだろうなどと考えていたとき、その人たちが来た。お父さんのトムと息子のジェーソンの二人で、牧師も光子もそれぞれ紹介し合い席についた。飲み物はいらないとのことだった。お父さんは会の始まる前にお手洗いにと立って行った。ジェーソンは、ここは落ち着けないから帰りたいなどと言い出したが、お父さんが戻ってきてジェーソンに声をかけると椅子に座りなおした。

ジェーソンは二十歳とのことだが、どこか頼りなく十五、六歳の少年のようにみえた。牧師は、ジェーソンが電話してきたときのことを確認した。ジェーソンは麻薬をやっていたこと、アルコール依存症でもあること、女性関係もあることなども話した

牧師は、デリバランスをはじめる前にもう一つ確認しておきたいと言って、イエス・キリストの福音、聖書は神の言葉であること、それから悪霊が人に働きかけること、人の中に住みつくことがあること、その悪霊を追い出せるのはイエスであり、聖霊の働きによるものであることなどを信じるかどうか聞いた。二人は牧師が質問した一つ一つに、信じると答えた。

デリバランスの祈りの方法を牧師は説明した。聖書の中にはイエスが悪霊に声をかけて導き出している。自分もそのように悪霊に声をかけて導き出す。ただ、導き出した悪霊を入れておく箱を作り、その中に悪霊を一つづつ入れて、審問する方法を用いる。そうすることによって悪霊をコントロールできるからと言った。

はじめる前に四人がそれぞれ自分たちの罪の告白をするために、第一ヨハネ1章9節をジェーソンに読むように言った。ジェーソンは読みはじめたが、頭の中が真っ黒で何も分からない。この聖書の言葉も何を言っているのか分からないと言った。牧師は、それではまず一番初めにジェーソンの思考を惑わしている悪霊を追い出さないことには何もできないと言って、その悪霊を導き出し、入れるための箱を作り、聖霊と天使達に守り固めてもらう祈りをした。

ジェーソンを惑わしている悪霊に箱に入るように命令した。ジェーソンは、箱も見えるし、箱の中にいる悪霊も見えると言った。牧師はその悪霊の名を聞いた。ジェーソンは直ぐにスティーブという名前だと言った。何の為にジェーソンのところに、そしていつからいるのかとの質問を一つづつ聞いた。ジェーソンは、はっきりと、思考を遮り何も理解できないように、二年前からジェーソンのところに来ていると言った。牧師は、その悪霊ともども一緒に働いている他の悪霊全てをイエスの何よって地獄の底に追い払ってくれるように、聖霊と天使の助けを祈り願った。

ジェーソンの様子が変わり、体中が痛い、手指に痺れるような感じが走り抜けており、震えが止らないと言って、指先で机を叩き、体中を震えさせ、足を踏み鳴らしはじめた。牧師はジェーソンの名前を呼び、ジェーソン、今何処にいるのか、誰と話をしているのかなどと質問した。ジェーソンは目をつぶり、牧師の顔も見ていられない状態になった。牧師は、話しているのはジェーソンか、ジェーソン、ジェーソンと名まえを呼び続けた。ジェーソンは、体中が痛い、痺れると前のように苦痛を訴え続けるので、牧師はジェーソンの肉体を痛みつけている悪霊を取り除くと言った。ジェーソンは、その悪霊の名前はルービンといい、二年前から来ていると言った。牧師はその悪霊を呼び出し、前と同じように名前を聞き、何故ジェーソンのところに来たのかなどを確認した。そしてイエスの何よって地獄の底に追い払ってくれるように、聖霊と天使の助けを祈り願った。

光子はジェーソンの体を抱きしめてやりたい思いになったが、牧師が何もしないのでじっと祈っていた。と牧師がジェーソンの名前を呼び、ジェーソンの片手を握り締めた。光子も反射的に反対の手を握り締めた。その手の冷たいこと。昔、光子の手の中で死んでいったお祖母さんの手を思い出した。そのあとも何回か悪霊を呼び出し、同じようにして悪霊を追い出した。少しづつジェーソンの体が静まってきた。

ジェーソンがお手洗いに立ったとき、お父さんが電車の中でも、道を歩いていても、今のように体中の震えがはじまるのだと言った。それからジェーソンのガールフレンドというか性的関係のある女性はよくないのだとも言った。この女性とは二、三年前から付き合っているのだが、どうもその頃から急にジェーソンは悪くなったようにも思えると言った。光子は、さっきから悪霊にも性別があるのだろうか。ジェーソンは男性名だけを言っていたが、光子には女性名も聞こえていた。女性名の悪霊がいるのもうなずけるななどと考えていた。
ジェーソンがお手洗いから戻ったとき、牧師は、今日はこれで止めて、またの機会にしてはどうかと聞いた。ジェーソンは続けたいようだが何も言わず、目を開けていられないから目をつぶっていて良いかなどと聞いた。でも時々目を開けて、牧師と光子をジロリと一瞥する目の氷のような冷たさ。牧師はそんなジェーソンに、立ってお父さんに抱いてもらって、お父さんとの愛を確かめるように薦めた。お父さんはそれを喜んで立ち上がり、二人は抱き合っていた。ジェーソンの体の震えも、お父さんに抱きしめられて完全に止んだ。牧師は、そんなジェーソンにどうするか聞くと、ジェーソンは続けたいとはっきり答え、席についた。でも目を閉じたり、開けたりはしていた。お父さんはジェーソンの震えがはじまらないようにと願ってか、肩をしっかりと支えていた。

牧師はジェーソンをゆったりさせるためか、ジェーソン、お父さんとどんな楽しい思い出があるか、ジェーソンはお父さんが好きかなどと聞いた。ジェーソンはあの冷たい目を半分開けながら、お父さんはとっても優しいよ、お父さんとキャンプに行ったり、釣りに行ったりしたよと答えた。お父さんのほうは、ジェーソンがそんな答えをしたとき、何か落ち着かない様子だった。牧師はそんなお父さんを一瞥しただけで、続けてジェーソンにもっと何か思い出せるかと聞いた。ジェーソンは落ち着きがなくなり、短い息をハアハアとしはじめた。牧師はお父さんに席につくように言い、ジェーソン、どうした。ジェーソンと名前を呼んだ。ジェーソンは過去のことが何も思い出せないと言った。
牧師は、過去のことを思い出せなくしている悪霊を呼び出し箱に入れて追い出そう、ジェーソンまた協力してくれるねと聞き、悪霊を導き出し、名前を聞いた。ジェーソンはジョージだと答えたが、牧師はいやその名は本当の名前ではない。何と言う名前かと聞き続けた。ジェーソンは耳を澄まし聞いているような様子で、二、三度いろいろな名前を言った。最後に、その名はジュリアンだと言った。牧師はそうだその名だと言って、何のためにジェーソンのところに来たのかと聞いた。お父さんはじめ家族を痛めつけ破滅に追いやるために随分前から来ていると言った。牧師は、この悪霊もイエスの名によって追い出そうと言い、祈った。そのあと小刻みに震えているジェーソンに、確かめるように、ジェーソンの考えを纏わし考えられなくしていた悪霊も、体を痛めつけた悪霊も、今また過去を思い出させない悪霊も追い出したんだよ、分かるかと念をおした。

そのとき、お父さんが自分は良い親ではなかった。離婚の過程で子供たちをないがしろにし、まだ小さかったジェーソンが煩くするので感情に任せて叩いたりもしたと言って、ジェーソンに謝り、許してくれと言いはじめた。ジェーソンはそんなお父さんをじっと見ていた。お父さんは立ち上がりもう一度ジェーソンを抱きしめたい様子をしたので、ジェーソンも立ち上がり二人はまた愛を確かめるように抱き合っていた。

牧師は、今日はこれまでにしよう、主な悪霊はいなくなっただろうと言ったので、光子は悪霊に性別があるのか分からないが、女性名の悪霊が多くいるようだと言った。ジェーソンも、お父さんも席につき、ジェーソンの女性関係の話になった。ジェーソンは、今付き合っている女性は、自分のことを魔女だとか、悪霊が宿っているとか言っていると言い出した。牧師は、そうか、その女性に関係のある女性名の悪霊を呼び出したいが、名前は何かと聞いた。ジェーソンは、ミッシェルだと言った。牧師は、その名の悪霊を呼び出し、箱に入るように言った。とジェーソンは「ノー」と言ってテーブルをドンと叩いた。光子は、恐ろしいことになるのではないか、またはこの悪霊が怒って光子の中に入ってくるのではないかなどと想像して恐れた。牧師がどうするか耳を済まして聞いていた。牧師は驚いた様子もなく、お前には何の力もないし、もう負けているのだ、ジェーソンはイエスの名の下に自由なのだ、お前の力は及ばないのだと強調した。箱に入るように言い、同じようにして悪霊を追い出した。

ジェーソンは、震えが止り、体が軽くなったようだと言った。光子も、ジェーソンがはじめ見たときより優しい、ハンサムな青年になったように見えると言って励ました。お父さんも喜んでいた。

最後に、ジェーソンは、このような悪霊のいうことを聞いたりしたことを許してくれるように神に祈った。みんなでジェーソンを囲んで、これからのジェーソンのため、イエスの愛で満たされるように、また悪霊のいたところが聖霊で満たされるように祈った。ジェーソンとはその後会ってないが、光子は牧師からジェーソンは仕事につき、小学校から知っていた女性との付き合いもはじまり落ち着いた生活をしていると聞いた。

このあと、牧師と一緒に多くの人たちのデリバランスの祈りをした。その中の一人で日本から来た人のデリバランスをしたとき、光子は自分の中にも同じような悪霊がいるのを見た。それは光子を死に誘い続けた悪霊だ。母親から受け継いだものらしかった。それが分かったあと、その悪霊は光子の肉体を苦しめはじめた。今まで何でもなかった血圧が急に高くなったり、脈が異常に早くなったり、呼吸困難、出血などがあった。その都度医者に行ったが何でもなかった。牧師にデリバランスの祈りをお願いしたが、夜寝る前の祈りをしていたとき、その悪霊を見ることができたので牧師がやったように聖霊と天使に願って、イエスの足下に連れて行って貰った。すると体の異常さがなくなったように思えたので、牧師にデリバランスの祈りはしなくてもいいと言ったが、来てそのときの様子など話し合おうということで約束の日に教会へ行った。

牧師とその頃教会でインターンシップしていた牧師の卵とで、光子のデリバランスの祈りがはじまった。いつものように、祈り、箱を作り、悪霊を呼び出し、箱の中に入るようにいった。箱の中には何も見えなかった。光子は牧師に、悪霊を追い出したからもういないのではないかと言った。牧師の卵も、光子には悪霊はもういないだろうなどと言った。でも牧師は執拗に迫った。まだいる筈だから、もう一度やってみようと言った。牧師は、凛とした声で、箱に入れと悪霊に命令した。と光子は見えた。箱いっぱいの大きな黒い塊のような悪霊が。それと一緒に光子の目から何の涙かわからなかったが、涙が出てきて止らなかった。そしてしゃっくりあげるまでに泣いた。この悪霊なのだ。光子は大学でキリスト教概論を学んだとき、家の宗教である禅宗も学ぶと言って禅寺に行ったとき、この悪霊に光子は取り付かれたのだ。

この悪霊は「ザー」という名だと言った。その働きは、光子がクリスチャンにならないように働きかけ、クリスチャンになってからは神の言葉、聖書を学んでも目を眩まして理解できないようし、神の言葉に逆らわせたりした。光子はイエスに会ってから、イエスを救い主と受け入れるまで十三年かかったのもうなづけた。聖書が理解できなかったのもこのためであることが分かった。牧師はいろいろ聞いたあとその悪霊を追い出してくれた。そのあとも数種の悪霊の追い出しをしてくれて、祈り会は終わった。

それからは、恵が言っていたように、罪の許しの祈りをすると体が宙に浮くように軽くなり、罪から自由になったのが分かった。その上、神の愛がひしひしと体の中から溢れ出てくるようだった。そして神の恵みと愛に泣けるものとなった。その涙は光子の罪を流してくれた。その涙は光子を自由にし、体を聖めてくれた。その涙は光子を神の愛で包んでくれた。

日曜学校の子供たちが光子を見つけると飛んできて、光子、光子と言ってなついてくれた。

光子の子供たちは、ゲームをしようという年齢からはかけ離れてしまったが、話し合って笑ったり、映画に行って泣いたり、ボーイフレンドのことを言い合ったり、楽しい日々が送れるようになった。
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Tsukasa Hiroko

Author:Tsukasa Hiroko
初めの家は塵でできており、砂の上に建っていました。
四十年前にシカゴで木の家を岩の上に建てさせていただきました。
今はレンガの家が岩の上に建つようにしていただいたようです。
金の家になれる日を望んでいます。

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